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2015.2.8 「すべての束縛からの自由」 出エジプト記20:1-6

 この個所は、「十戒」と呼ばれます。重要なことは、「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である」という言葉です。これは十戒全体を理解するための重要なカギです。イスラエルを愛し、エジプトの奴隷状態から救い出して下さった主なる神が、「私」と「あなた」という関係で親しく出会ってくださる。そうであれば、十戒の一つ一つの戒めを守るはずであるというのです。良き音信(おとずれ)、喜び、解放が、「戒めに先立つ」のです。

 1.第1戒 その誤解 唯一神論と単一神論の混同

 第1戒「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」。この戒めについて日本人の多くは誤解します。「一神教は攻撃的、好戦的である。なにしろ、自分たちの神以外認めないのだから。それに比べ、日本的文化・信仰は多神教で、とても寛容である」と。先週は「イスラム国」によって殺害された後藤健二さん(47歳)のニュースが流されました。アラーの名で人を殺す「イスラム国」も問題ですが、有志連合とやらで、「イスラム国」を空爆して数千人を殺している米国、英国、フランスの酷さも相当です。こういう国々が、いわゆる「キリスト教国」であることを考えますと、確かに、通俗的主張も当たっているように見えます。

 2.しかし、第1戒は、この世の何かを神のごとく絶対化しないこと:自由であることの勧めです。そのような偶像礼拝を私たちが拒否しなければ、途端に人間は不自由になってしまうのです。もし、人が、それが、財産であれ、大切な家族であれ、祖国であれ、それを神のように「絶対化」してしまったら、再び不自由が始まる、それらに支配されてしまうということです。

 3.国家を偶像視するナショナリズムの問題

 この世の中の何かを「絶対化」し、拝む、「単一神教」(henotheism)が問題なのです。そして、もっとも手ごわいのは、国家の絶対化なのです。自国に格差が生まれ、風通しが悪くなると、その国の共通の敵を造りだし、攻撃するのです。ここでは国境を越えて猛威をふるう帝国主義的金融資本主義と国境の向こうにいる人々を差別するナショナリズムが一体となるのです。日本でもかつて、絶対天皇制軍国主義体制の中では、異なった信仰、他の価値観には不寛容で、それらを徹底的に弾圧したのです。

 4.紀元節と建国記念の日

 2月11日に「建国記念日」を迎えます。キリスト教会はこの日を「信教の自由を守る日」としてきました。紀元節は、天皇支配を正当化するために編纂された『日本書記』が伝える神武天皇の即位日として定めら、1873年(明治6年)に、2月11日と定めらました。当時は「廃仏希釈」運動により、仏教が大弾圧され、自然神道や教派神道も圧迫を受けて、皇室神道を中心とした国家神道が人為的に、出来上がっていく時代でした。そして、紀元節は15年戦争下、天皇制軍国主義の侵略の高揚のために用いられた、まさにその日なのです。この日を戦後、再び「建国記念の日」にするとことは、日本人や日本国家が過去の侵略戦争をあまり反省していないことになるのではないでしょうか。そこからは自分本位で他者の痛みに鈍感な生き方が生まれるのです。(松見俊)