古代イスラエルの歴史は、エジプトの抑圧状態から主なる神が、彼ら解放された出来事、約束された地に入り、そこで、神を中心にして12部族連合を結成したことが中心ですが、12章から始まるアブラハム物語の前におかれた創世記の1~11章までは、この基本的物語に後から加えられたと推定されています。
1. 創世記1章の背景
北イスラエル王国は、紀元前721年アッシリア帝国によって滅ぼされ、南ユダ王国は、紀元前587年バビロニア帝国に滅ぼされました。自国が敵の圧倒的武力の前で崩れ去った経験はまさに、全くの闇に覆われるような深い絶望的経験でした。「地は混沌であって…」。この経験を想像してみることが大切で、「混沌」はエレミヤ4:23にも用いられています。
2.「創造された」(バーラー)
神は、天地を「創造された」。この言葉は、神だけが主語の場合に用いられ、人が何かを「創造する」という形では用いられません。16節の「神は二つの大きな光る物と星を「造り」は「マーサー」で、create と make が区別されています。すでに創造した世界を促す、6節の「あらしめよ」(let)あるいは、9節の「天の下の水を一つ所に集まるようにさせよ」11節の「地をして草を芽生えさせよ」(let it be)とも区別されています。聖書の神は、イスラエルを救い出す神、戦争の神である「万軍の主」であるだけではなく、天地万物を創造した方であるというのです。
3.神の霊(ルアッハ)
「神の霊が水の面を動いていた」という言葉に2つのイメージを考えます。荒れ狂っている海の上に暴風が吹いているものです。「春一番」という強い風のように、この神の霊、神の嵐はそこから命が誕生する、春が到来する予感を私たちに与えます。2つ目は親鳥が翼を広げてヒナたちを護るイメージです。神の霊が、混沌とした大地と荒れ狂う海をしっかりと抱き留めているのです。今朝、創造主である神は、問題を抱え、傷付いている皆さまをみ翼の陰に隠し、覆って下さいます。
4.「初めに」(ベレシート)
「ベレシート」という言葉は、「ローシャー」(一つの頭)という言葉から由来しています。牛が「1頭」、そこから「最初」という意味になります。皆さんにとって「最初のもの」、一番大切なものは何ですか。神が世界の主であるという単純でしかも素晴らしい信仰告白に、小さいけれども自分の物語を位置づけ、つなげて生きたいものです。(松見 俊)
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