１：　　イエスのバプテスマの意味

　私たちにとってのバプテスマは、水のうちに沈められ、もう一度起こされることによって、一度死に新しい命に生きることを象徴的に表します。このバプテスマを神であるイエス様が受けられることをどのように理解することができるのでしょうか。この問いに対して「イエスは自分自身に罪があった」「イエスはこの時に神の子として目覚めた」という考えがありました。これらの解釈に通じている考えは「イエスは完全には神様ではない」という考えです。しかし、キリスト教は、イエスは１００％人間であり、１００％神であると告白するのです。

２：　　神の子　苦しみを共に担う方

　イエス・キリストは「誰か」ということには２つの側面があります。

　一つは、イエス様は神の愛する御子であり、その御心のうちに救い主とされる者であるということです。神様は「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」（１７）と語られるのです。ここでイエス・キリストは、神様の愛する御子としての救い主であることを明確に語られるのです。これが一つの側面です。

　そして、二つ目の側面は、イエス様は「罪の中に来られた方である」ということです。イエス様は人間に連帯する者となられた方です。イエス様のバプテスマは、人間の苦しみを共に担う姿を表すのです。イエス・キリストは、ここに神の子としての救い主であり、人間と共に生きる救い主であるという姿を表されたのです。

３：　　十字架の道を歩み始められた

　イエス・キリストのバプテスマは、十字架へとつながっていきます。キリストはバプテスマの中で痛みと苦しみを受け取られる道を歩き出したのです。神様の言葉「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者」とは、キリストのバプテスマを通して、私たち一人一人に向けられている御言葉です。

４：　　へりくだり

　バプテスマの出来事はイエス様の十字架において完成されます。イエス・キリストの十字架は、自分を無にするまでにへりくだられた出来事です。私たちが「イエスは主である」と告白するバプテスマは、十字架の道に従い歩いていくということを告白することです。「仕えたい」という心は、人間の心からはあふれ出てこないのです。心にキリストを迎え入れ続けることがなくては、私たちには「へりくだる」という道を選びとることはできないのです。主イエスを心に迎え入れることによってへりくだりの道を歩く、信仰と勇気とをいただいていきましょう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（笠井元）