1. 十戒の前提
十戒の大前提「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である。」(2)まず神様が解放してくださった。だから人間はその愛に応じた生き方をする。わたしたちが神様を愛し、敬い、殺さず、盗まず、隣人をむさぼらなかったから、神様が愛してくださるというのではないのです。まず神様が愛してくださっている。その愛の内に生きる道筋を示したのが十戒です。
2. 共同体として生きるための道しるべ
イスラエルの民は、神様の御業によってエジプトから解放され、シナイの荒野にやってきました。エジプトの地において何年もの間奴隷であった者が、一つの共同体として生きるとき、秩序のない暴徒となってしまってもおかしくなかったでしょう。
「なぜ生きているのだろうか。何を目的として、何を守り、何を大切にし、何を必要としているのか。」この問いに対する答えが共同体として生きる秩序を作りだします。イスラエルの民が、神様から救い出された共同体として心を一つにして生きるためには、その救いに目を向けつづけて生きることが必要なのです。
3. 自由を与える道しるべ
十戒は自由を与える道しるべです。これまでむさぼられ、虐げられてきた者が生きる道。それは貧しい者、弱い者を作りだし、むさぼり、虐げて生きていく道に進む可能性もあったでしょう。神様の解放は「自分ひとりでがんばらなくてよい」「自分で生きているのではない」と教えてくださっているのです。神を神としない生き方、他者の気持ちを無視して自分のためだけに生きる必要はないのです。これが十戒の与える自由です。十戒は、十の命令ではなく、十の祝福、十の恵みなのです。
4. 神を神とする
「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。」(3)は「あなたには、わたしをおいてほかに神をおくことはありえない、できるはずがない。」という意味として考えられます。
「教会ではヒューマニズムに一番、気をつけなければならない。」と言われます。
神を神とすること。これが第一の掟。十戒の第一戒です。神様は私たちに、何を第一にするか問われているのです。「神を神とし、他者を愛する」。これが神様から与えられたメッセージです。(笠井元)