1: 神様による任命
7節から幕屋や、幕屋で礼拝をするための道具や、祭司の服などを作るように記されています。作り方は、25章からとても細かく記されてきましたが、実際に言葉の説明だけでものを作るのはとても難しいことです。今日の箇所は「技術者の任命」となっていますが、3節では「神の霊を満たし」「知恵と英知と知識」(3)を持たせるといいます。
岩波訳の注釈では「旧約聖書における知恵(原語ホフマー)は、単に知識や思考力といった知的能力だけでなく、実践的・実際的な問題解決能力や、さらには職業上の手腕や技術的熟練度をも意味し得る」と書かれています。技術者は神様の霊に満たされ、知恵、知識だけではなく、実際に幕屋などを作るための能力が与えられたのです。
2: 何のために造るのか 偶像?
一つ問題なのは、これらが偶像を造ることになるのではないかということです。神様は十戒の第二戒において偶像を造ること、礼拝することを禁止されています。宗教改革の一つのひきがねとなった出来事として、教会堂の建築のために不正に献金をさせたということもありました。「神様を礼拝するため」という内実が抜けてしまうことによって、建築することが偶像化してしまうことがあります。ただ、実際に自然や生き物など、視覚的要素から神様を感じることはあります。建物や芸術、また音楽などから、神様を感じることもあります。
3: それぞれに与えられている 賜物
6節では「助手」として「ダン族のアヒサマクの子オホリアブ」が任命されます。神様はただ命令するだけではなく、そのために必要な人間を呼び集め、必要な賜物を与えてくださったのです。賜物は、それぞれに違いがあり、建築家であっても、ひとりはリーダーシップを持つ者、ひとりは助手として働く者がいます。神様は、幕屋を作るために、必要な賜物を持つ人間を集めてくださいました。
4: 働くことと安息日(12-18)
神様は働くことの最後に「安息日を守ること」を語ります。安息日を守ることは神様によって与えられた「永遠の契約」です。つまり神様に向き合う大切な時間、礼拝の時なのです。幕屋作り、礼拝道具、祭服作りなどは神様の命令によって働くのですので、働き続けていれば神様に従っていると感じてしまうでしょう。「神様のために」として働くことで、それがいつの間にか自分の仕事の結果、自分の能力、達成感を大切にしてしまうことがあるのです。
働くことは大切です。しかし、何よりもまず、神様との関係を守り、神様のために生きる。神様と向かいあい、そのために働くのです。そのことを思い起こさせるために、最後に安息日の厳守が教えられています。(笠井元)