1: 内側からの嵐
二人の悪霊に取りつかれた者が現れます。悪霊に取りつかれ者たちは、その地に住む人たちからすれば、危険に脅かす加害者だったかもしれません。しかし、実際には二人の悪霊に取りつかれた者自身、苦しんでいた、被害者であったのではないでしょうか。
悪霊が心のなかに来ている一つの状態としては、自分がしたいことがうまく表現できないような状態があるのだと思います。悪霊は、人間の心を破壊し、神様と人間、人間と人間の関係を破壊するために働きます。心の中に嵐を呼び起こすのです。
2: 神の子の言葉
イエス様は悪霊に対して「行け」と言われました。この一言の言葉によって悪霊は人間から離れていったのです。イエス様は、ただの一言で人間のうちにある悪霊を追い出したのです。ここに神の御子イエス・キリストの言葉の権威が表されています。
悪霊は「神の子、かまわないでくれ。」(29)と言いました。私たち人間よりも、悪霊は自分を滅ぼす力をもつ「神の子」の存在を、よく理解していたのです。そして「神の子」イエス・キリストの言葉は、この悪霊にとって権威ある言葉だったのです。
3: 「その時」の始まり
悪霊は「まだ、その時ではない」と言います。「その時」とは、いずれ来る「終末の時」を意味しています。「終末の時」とは「神の愛の完成」の時を指しています。
悪霊は、その働きとして愛の破壊を行うのです。その形は様々です。災害、病気、死などさまざまな形をもって「神様の愛」を疑わせ、神様から離れる道へと導くのです。私たちは多くの誘惑を受けています。しかし、イエス・キリストがこの世に来られたことによって「その時」つまり神様の救いの完成の時は始まったのです。
4: 価値観の変換
大切な財産が失われたことから、人々はイエス様に「出て行ってもらいたい」と言いました。二人の人が悪霊から救い出されたのです。悪霊は豚に入り、豚が死んでいったのでした。この出来事が伝えていることは、豚によって象徴される「この世の財産」よりも、一人の苦しむ命の方が大切だと教えているのです。
私たちは、自分の財産と苦しんでいる人の救いと、どちらを大事にしているでしょうか。経済的、物質的な損失と、人間の命の癒しとどちらを喜ぶのでしょうか。いずれ消えゆく、この世の財産や名誉を超える、神様の愛をいただきましょう。(笠井元)