1: ルカから使徒言行録へ
使徒言行録の著者は、ルカによる福音書の著者と同一人物ルカと考えられています。二つの書は、最初はイエス様、次は使徒たちがどのように生きたかを記しています。二つの書は「いつ」「どこで」「なにがあったか」ということを正確に伝えようとしているのではなく、イエス・キリストを中心とした福音を伝えるための書物です。
今日の箇所はイエス様の働き「十字架」と「復活」から「ペンテコステ」へ、そして「使徒の働き」「全世界に広がる神様の福音」の出来事へとつなげられていきます。
2: 終末の遅延
使徒たちは「主よ、イスラエルのために国を建て直してくださるのは、この時ですか」(6)と尋ねました。著者ルカの意図はただの「イスラエル王国の再建」を求めたのではなく、「神様の愛を基とした正しい秩序の世界」を求めた言葉と受け取ることができます。世界が神様の愛という価値観のうちに満たされて建て直されていく。そしてその愛を土台とした世界の完成が「終末」の到来となるのです。「終末」はいつくるのか、それは「あなたがたの知るところではない」(7)という言葉は、期待の中における終末、再臨の遅延への理解を含めた言葉となるのです。
3: 福音を伝えることによる終末の始まり
終末、そして再臨の出来事が遅れていくなかで、「何をすればよいのか」という疑問に対して、「エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」と教えます。イエス・キリストを宣べ伝えることによって、キリストの輪を広げていくことが、すでに「終末」の始まりなのです。
4: 福音の証人となる
終末の遅延における生き方、終末の始まりを生きるために「聖霊による力」が必要だと示されます。使徒言行録の、一番最初に、「イエス・キリストの証人、福音の証人となる」ことが示されています。そのために「聖霊を受ける」ことが必要だと教えます。
5: 昇天
9節から「昇天」のことが語られていきます。「昇天」の出来事はマタイ、ヨハネの福音書には記されていません。マルコでは16:19-20において記されていますが、〔〕がつけられ、二次資料として扱われているものです。ルカでももともとは二次資料とされていたようです。
「昇天」の意味ですが、一つに聖霊の降臨の前提だということができます。聖霊としてのイエス・キリストの存在は、この世のどこかに限定されないことを表します。もう一つとして、イエス様が天に昇るということから「再臨」という希望の出来事を示します。
イエス様の昇天の出来事は希望の出来事です。希望を待ちつつ、聖霊を受けて、福音を宣べ伝えていく使徒の姿がこれから始まっていくのです。(笠井元)