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2019.5.22 「ペトロが持っていたもの」 使徒言行録3:1-10

1: 生まれながらに足の不自由な男

 2節で生まれながらに足の不自由な男が運ばれてきました。「生まれながら」ということは、生まれた部屋からも、生まれた家からも、すべてだれかに運んでもらうことがなければ、どこにも行けないのです。つまり自分では、今、自分がいる世界から別の世界、新しい世界に出て行くことができないのです。新しい道を歩き出すことが何一つできなかったのです。できるのはただ見つめること、そして物乞いだけでした。この人はいつも誰かにすがるしかなかったのです。

 

2: 目を合わせる

 ペトロとヨハネは【彼をじっと見て、「わたしたちを見なさい」と言った。】(4)のです。目を合わせることは関係を作りだす最初の行為です。わたしたちは、関係を持ちたくない人とはできる限り目を合わせないのではないでしょうか。この足の不自由な人に施しをする人はいたかもしれません。しかし、目を合わせる人はほとんどいなかったでしょう。

 ペトロとヨハネは施しを乞うこの人を「じっと見た」のです。それだけでなく「わたしたちを見なさい」(4)と言ったのです。ペトロとヨハネは自分たちから目を向け関係を持とうとし、同時に足の不自由なこの人に「わたしたちを見なさい」つまり「自分たちと関係を持とう」と話しかけているのです。

 

3: ペトロが持っていたもの 

 ペトロはこの人に「自分はお金は持っていない。持っているもの、イエス・キリストによる福音をあげよう」と言うのです。ペトロが持っていたものは、「金や銀」ではなく、「神様の愛、人間を解放する力」でした。ナザレの人、イエス・キリストの名。この名前は「十字架の上で死んだイエス・キリスト」であり「新しい命に復活された方イエス・キリスト」です。

 ペトロは、この名によって心も体も立ち上がる力を失っていた者に、もう一度立ち上がる力を与えたのでした。

 

4: 神様を賛美する者と変えられた

 足の不自由な人は、イエス・キリストの名によって立ち上がりました。イエス・キリストを土台として、しっかりと自らの足で歩きだしたのです。そして障がいによって入ることすら許されなかった「美しい門」からペトロとヨハネと一緒に神殿に入り、歩きまわり踊り、神様を賛美したのでした。

 私たちは病が癒されたら、それからどのように生きようとするでしょうか。この人は癒され様を賛美する者となったのでした。つまり、ただ足が癒されたということを体験しただけではなくペトロとヨハネの背後におられるイエス・キリストに出会い、生き方を変えられたのです。

 自分自身の存在の意味、生きている意味が新しくされたのでしょう。その口は、神様を賛美する口に変えられたのです。そして躍り上がるように喜んで新しく立ち上がったのです。これがイエス・キリストに出会うことです。(笠井元)