1: アンティオキア教会の5人
パウロの第一回伝道旅行が始まります。アンティオキアの教会の中心人物が5名挙げられます。 バルナバは4:36に初めて登場します。立派な人物で、聖霊と信仰とに満ちていた人物とされています。ニゲルと呼ばれるシメオンは、「ニゲル」という言葉が「黒」を意味していることから、アフリカの黒人であったのではないかとも考えられています。領主ヘロデと一緒に育ったマナエンは、他の4名がディアスポラのユダヤ人であるのに対して、ヘロデ・アンティパスと一緒に育ったパレスチナのユダヤ人です。キレネ人ルキオ、シメオン、バルナバはアンティオキア教会創設の人たちであったとされます。アンティオキア教会には、この5人を中心に預言する者や教師たちがいました。
2: 聖霊に選び出され、教会に送り出されたバルナバとパウロ
5人の中から、バルナバとサウロが聖霊によって選び出されていきます。ここから始まる第一回伝道旅行は、これまでの伝道から見ると広い視野をもった世界伝道の始まりの出来事でした。この福音伝道の出来事は、自分たちの思いによって始まったものではなく、神様の選びによって与えられた出来事です。そして、二人が出ていくために、断食と祈りをもってルキオ、シメオン、マネエンを中心とした教会が祈りを合わせて、二人の上に手をおいて派遣していくのです。
3: 主のまっすぐな道をゆがめる者
4節からキプロス島での伝道が始まります。当時のローマの高官は、魔術師、預言者から神の言葉を聞く習慣がありました。ローマの総督セルギウス・パウルスもまた、神様の言葉として、魔術師、預言者から言葉を聞いていたのです。そこにバルナバとサウロがやってきたのです。バルイエスやエリマにとっては、総督にバルナバとサウロが近づくことは自分の地位が危うくなることでした。
パウロは魔術師を「あらゆる偽りと欺きに満ちた者」「悪魔の子」そして「主のまっすぐな道をゆがめる者」と言いました。魔術師エリマは「主のまっすぐな道をゆがめる者」なのです。神様の道をゆがめる者が盲目とされたのです。それは自分が正しいと思っていた人間に、その間違えを教えた行為ともいうことができます。
4: 信仰に入った総督
セルギウス・パウルスはこの出来事を目にして信仰に入るのです。それは、これまでエリマたちの言葉によって、ゆがんだ道を歩いていたことに気づき、本当の福音の言葉を聞く中でまっすぐな道を見ていったということです。ここに「悔い改め」の出来事が起こされているのです。ここに賢明な人物とされる姿を見ることができるでしょう。この総督は、自分の持っている考えに留まるのではなく、新しい福音の言葉に歩き出したのでした。(笠井元)