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2020.10.28 「ただ福音のために」 使徒言行録21:17-26

1. エルサレム教会とパウロ

エルサレムには試練が待ち受けていることはパウロ自身もよくわかっていました。この姿は十字架を受けることを知りながらもエルサレムに上っていくイエス様の姿を思い起こさせます。

ヤコブと、エルサレムの長老もパウロの働きを聞き、神様を賛美したのです。使徒言行録では、パウロはエルサレム教会によって認められ、派遣された者として異邦人伝道を行っています。この後「私は、同胞に救援金を渡すため、また、供え物を献げるために、何年ぶりかで戻って来ました。」(使徒言行録24:17)とあるように、パウロがエルサレムに来た目的は献金を渡すためでした。(ローマ15:25-31)ただ使徒言行録ではこの献金についてはほとんど記されていません。一つの理由として献金によって、パウロとエルサレム教会との間に亀裂がはいったからだと考えられています。

 15章ではエルサレム会議において「ユダヤ人も異邦人も、ただ主イエスの恵みによって救われている」ということを確認したのです。そのうえで「偶像に供えて汚れた肉と、みだらな行いと、絞め殺した動物の肉と、血とを避けるようにと、手紙を書くべきです」(15:20)とも付け加えたのでした。このことは今日の25節にも記されています。

 

2. パウロの伝道内容の誤解

ここでは一部のユダヤ人が、パウロの伝道内容に誤解があることを教えます。パウロたちが「子供に割礼を施すな。慣習に従うな』と言って、モーセから離れるように教えている」(21:21)と誤解をしていたのです。もともとパウロは、ユダヤの伝統を重んじていたファリサイ派の一人で、ユダヤ人の律法に正しく生活することを大切にしていた人でもありました。使徒言行録16章ではテモテを同行させるために、テモテに割礼を授けてもいるのです。ガラテヤ書3:24にあるように、パウロは、律法を廃止し、律法から離れるようにというのではなく、律法は、キリストによる福音によって救いを得ることを知るための養育係、キリストを信じるために必要なものであると教えたのです。

  

3. ユダヤ人の理解を得るために

 エルサレム教会は一部のユダヤ人の誤解を解くために、パウロに誓願の儀式、清めの式を行うことを勧めます。これは民数記6章にあるナジル人の誓願の儀式とも、民数記19章にある清めの儀式とも考えられていますが、27節の七日間というところから考えると、清めの儀式であったと考えられます。「彼が三日目と七日目に罪を清める水で身を清めるならば、清くなる。しかし、もし、三日目と七日目に身を清めないならば、清くならない。」(民数記19:12

 

Ⅰコリントの信徒への手紙でパウロは「ユダヤ人に対してはユダヤ人のようになる。律法に支配されている人のようになりました」(Ⅰコリント9:19-23)と言いました。そのような意味では、律法を守ることを求めるユダヤ人のために清めの式を行ったということができます。パウロのこの行為が福音のためとなったかは疑問が残りますが、パウロはユダヤ人の誤解を解き、理解を得るためにこの清めの式を行いました。(笠井元)