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2021.6.9 「一致」 Ⅰコリントの信徒への手紙1:10-17

1: 心と思いを一つにして

 パウロの時代コリントはビジネスが盛んな国際都市でした。ビジネスでは、自分と相手の違いを際立たせて、自分のほうが勝っているとすることは積極的な作戦とされます。コリントの教会では他者より自分たちがより優れていることを主張しあっていたのです。

パウロは「皆、勝手なことを言わず、仲たがいせず、心を一つにし思いを一つにして、固く結び合いなさい。」(10)と言いました。つまりコリントの教会では、仲違いし、ばらばらになってしまっていたのです。「仲違い」という言葉を「互いの間にみぞを作る」と訳す人もいるようです。関係に溝を作った。つまり関係自体が切れてしまっていたということです。また「心と思い」と言うことで、内的な動きすべてにおいてということを強調しています。パウロはお互いの内的な動き、すべてにおいて一つになるように教えたのです。

 

2: キリストはいくつにも分けられたのか

 パウロはコリントの教会の創立に関わった人物であり、アポロはパウロの後にやってきて、雄弁に語りコリントの教会を成長させた人物です。ケファとされるペトロはコリントの教会には直接には関係はありませんが、福音の使信をさかのぼる中で出てきたと考えられています。「パウロ」「アポロ」「ケファ」そして「キリスト」という名前を持ち出して、自分たちのほうが優れている、自分たちの方が正しい、だから自分たちの方が権力、地位を持つことができると考えていたのです。

パウロは、自分が十字架につけられたのでもなければ、自分の名前によって、バプテスマが行われているのでもないと言います。福音はキリストの十字架と復活によるものです。

 

3: キリストの名によるバプテスマ

 コリントの教会では、誰からバプテスマを受けたのかということでも、それぞれの優劣が争われていたのです。

パウロはコリントの教会の人々に、「十字架につけられたのは誰か」「誰の名によってバプテスマを受けるのか」と問うのです。私たちが受けるバプテスマは「キリストの名によるバプテスマ」です。誰がバプテスマを授けたかということは関係ないのです。

 

4: 一致

 コリントの教会のように分裂状態になることは特別なことではありません。教会の一致する点は、キリストの十字架と復活という福音にあります。自分たちは罪人で、キリストの十字架が必要であるということを忘れてしまう時に分裂は起こります。人間は罪人で、罪からキリストの十字架によって救い出された。このことは誰も変わりません。人間の一致の場所は、自分たちの罪であり、その罪からの救いを与えられたキリストの十字架の出来事なのです。(笠井元)