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2023.2.12 「親子の絆:その断絶の危機と回復」(要約)  出エジプト記20:1-2、12

 モーセの十戒は、二つの石の板に刻まれており、一~四戒は神と人との縦の関係を、そして、五~十戒は、神における人間同士の横の関係について語っていると考えられています。今朝は五番目の戒め、「あなたの父と母を敬え」という戒めに耳を傾けてみたいと思います。

 1.主にあって親子の絆を考えてみる

 最初に、第一の板と第二の板が不可分離であることを強調したいのです。つまり、「あなたの父と母とを敬え」という戒めによって、実は神を敬うことが問題となり、逆に、神を敬うことは、最も近い隣人である老いて、衰えた父母を敬うことから切り離すことができないということです。

 2.親子の絆の断絶の必要性

以上のことを踏まえて、第一に、親と子の「断絶」「切れること」の大切さについて考えてみましょう。伝統的な家父長主義的な縦型社会が乗り越えられてはじめて、他者である二人が共に生きるという、新しい横の関係という、実に風通しのよい人間関係が生み出されたのでした。昨今、親を殺してしまう子供の事件の中に、「親との距離感のつかめない子、子との距離感をつかめない親」の問題がないでしょうか?親の気に入る子になろう、親に見捨てられたらどうしようと思う「愛着障害」の子どもたち、親の期待に押しつぶされそうな子どもたちの悲鳴が聞こえてきます。

3.親子の絆の受け取り直し:断絶の回復

ここで戒めが語り掛けているのは、特に年老いて何もできなくなる親を抱えている人々に対してであることを心に留めましょう。最近では、人種差別、性別差別、富める者の搾取による経済格差に加えて「エイジズム」と呼ばれる問題があります。若い世代に過重な負担を強いる年金と病院通いで「金くい虫」ではないかという、老人たちへの若い世代の冷たい視線、敵意の問題もあります。親の介護疲れ、認知症になった親への落胆もあるでしょう。子どもを養うことが精一杯で、とても老いた親の面倒を見ることなどできないということ、迷惑を掛けたくないと思いもあります。しかし、戒めは、神様への信仰において親を新しく「受け取りなおす」こと、新しい「関係の回復」が呼びかけられているのです。ここで、「敬う」(カーベッド)とは彼らに「重さを与えること」、「誠実に受け留めて、軽々しく評価しないこと」を意味します。私たちの父と母は軽くなってきます。親が軽くなってしまった事実に直面して狼狽える人たちに向けて語られています。

4.信心深い者への警告

 

教会で奉仕をしたり、この世界で他者に仕えているからと言って、父と母を敬わなくて良いことにはならないのです。もし、私たちが、両親が指し示すものを見ずに、人は神の恵みと他者の助けによって生きるのだということを見抜けずに、歴史的に先だつ先輩としての両親と共に生きることができずに、いたずらに思い上がり、両親への「敬い」を失う時、実はその両親に由来している自分自身をも失うことになるのです。(松見俊)