１：　　イエスの執り成しの祈り

この場面はイエス様が一人で祈られたことから始まります。ルカによる幼福音書ではイエス様が祈られる姿というものが数多く記されています。イエス様の祈りは、最後の晩餐でペトロを励ますために、イエス様が「わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った」（ﾙｶ22:32）と語られたように、また、十字架上で「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」（ﾙｶ23:34）と祈られたように、励まし、執り成しという意味での祈りが多くありました。

ペトロがイエス様を「神からのメシアです」（ﾙｶ9:20）と告白していくことも、イエス様が自らの死と復活を予告され、「わたしについて来たい者は、自分を捨て、日々、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。」（ﾙｶ9:23）と語られていくことも、このイエス様の執り成しの中において語られる言葉なのです。

２：　　あなたは私を何者だと思っているのか

イエス様は、弟子たちに「群集は、わたしのことを何者だといっているか」（ﾙｶ9:18）と尋ねられます。そして続けてこのように尋ねられました。「それでは、あなたがたはわたしを何者だと言うのか。」（ﾙｶ9:20）イエス様は、弟子たちに、この世の評価ではなく、あなたがた自分自身にとって、この私、イエスとは何者なのかと尋ねられたのです。自分にとってイエスとは誰であるのか。それは自分とイエス様との関係が、どのような関係なのかということを意味します。

３：　　ペトロの信仰告白

「あなたにとって、私は何者なのか」。イエス様のこの問いに対して、ペトロは「神からのメシアです」（ﾙｶ9:20）と答えます。当時、イスラエルはローマ帝国の支配下に置かれていましたので、メシアというと、この世的力をもってローマ帝国から救い出す、政治的な救い主を意味していました。ペトロも、当時の人々が考えていた意味でのメシアを自らのメシアと考えていました。そのような不十分な理解であり、不十分な告白であったとしても、イエス様が執り成してくださる中で、その告白は、神様の前に差し出され「良し」とされていったのです。

４：　　自分の十字架を背負ってわたしに従いなさい

自分の十字架を担うことは、ただただ神様に寄り頼むことを意味しているのです。私たちは、自分自身を中心に、自分自身に寄り頼み生きています。そのような生き方を捨て去り、むしろ自分の無力さ、自分の弱さに目を向け、イエス・キリストの執り成しを受け取っていくことが、自分の十字架を担うということになるのです。神様に寄り頼み生きる時、私たちは生き方を根本から変えられるのです。神様に寄り頼み生きる時、私たちは、自分が愛されていることと同時に、隣の人も同様に愛されていることを知るのです。私たちは、神様と向かい合う中で、隣人へと目を向け、そして、共に、歩む者とされていきたいと思います。（笠井元）