１：　信仰とは

　ヘブライ書は神学書ではなく、当時の人々に向けた励ましのメッセージです。そのため、ここで信仰について理論的にではなく、信仰を保ち続けるために語られているのです。（ﾍﾌﾞﾗｲ11:1）私たちは信仰によって生きるのです。神様に愛されており、生かされていることを確信をもって信じて生きるのです。私たちがこの世において経験することは、時にとても不条理、納得のいかないことも沢山あります。パウロはこのように言います。【わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。】（Ⅱｺﾘﾝﾄ4:18）【目に見えるものによらず、信仰によって歩んでいるからです。】（Ⅱｺﾘﾝﾄ5:7）私たちは、今、ここに生かされており、そして、誰もが必ずいずれ死を迎えます。私たちは見えないものに目を向けるのです。見えるものは、いずれすべて過ぎ去ります。しかし、見えないもの、信仰は永遠に存続する。神の愛は永遠に存続するのです。

２：　神によしとされたアベル　今も語り続ける

　まずアベルから見ていきたいと思います。（ﾍﾌﾞﾗｲ11:4）創世記４章にカインとアベルの物語が記されています。アダムとエバの間に、カインとアベルが生まれました。神様に礼拝をしたとき、アベルは「羊の肥えた初子」を持ってきて、カインは「土の実り」を持ってきました。神様は、このアベルの捧げものに目を留められ、カインの捧げものには目を留められなかったのです。なぜなのかは記されていません。このことをに怒ったカインがアベルを殺したのです。

なぜ神様がアベルの捧げものだけに目を留められたのか、色々な理由が考えられてきました。一つには、カインという名前は「得た」という意味を持つとされ、アベルは「空しい」または「息」という意味を持つことから、神様はこの世で「空しい」とされる者を選ばれることを意味していると考えられます。イスラエルがもともと遊牧民であり、農耕民族のカナン人とは敵対関係にありましたのでそのような関係が物語に影響しているのではないかとも考えられます。

今日の、ヘブライ書では４節に「アベルはカインより優れたいけにえを神に捧げた。そしてそれは信仰によって正しい者であると証明された」と記されています。創世記では４：１０において、神様はカインにこのように言われました。【 「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。」】（創世記4:10）アベルの血の叫びを神様は聞いておられるのです。ここに同じように叫び死んでいったイエス・キリストを見ることができます。そして、その後よみがえらされたイエス・キリストを見るのです。神様は、私たちの叫びを聞いておられる。そしてその叫びに応え、救いを成し遂げ、慰めてくださるのです。

３：　神に喜ばれたエノク　信仰によって喜ばれた

エノクは、創世記５章において、【エノクは神と共に歩み、神が取られたのでいなくなった。】（創世記5:24）と記されています。このヘブライ書では、エノクは「移される前に、神に喜ばれていた者」とされ、【信仰がなければ、神に喜ばれることはできません。】（ﾍﾌﾞﾗｲ11:6）と教えるのです。神様の恵みを信じて求める時、神様は報いてくださる。そのことを信じるように・・・と励ましているのです。私たちも、困難にあるとき、このことを覚えておきたいと思うのです。エノクを天に移されたように。神様は、私たちに必要な働きをしてくださる。それは人間の思いを超えて働いてくださることを信じていきたいと思います。

４：　見えない事柄を信じたノア

ノアの物語は創世記６章～９章において記されています。この地上が堕落し、不法に満ちていたため、神様がこの世のあらゆるものを滅ぼすため大洪水を起こされたのです。今日の箇所では、【ノアはまだ見ていない事柄について神のお告げを受けた】（ﾍﾌﾞﾗｲ11:7）とあるように、ノアが神様に「箱舟を造りなさい」といわれた時、そこには川も海もなく、大雨が降り始めていたわけでもないのです。その中で、ノアは神様の言葉を信じるという道を選び取ったのです。これがノアの信仰です。

私たちは今目の前にある現実だけを信じるのでしょうか。この世は人間の欲望によって破壊されてきています。自然災害という問題が多発していますが、これは突き詰めて考えると人間の欲望によって行われてきたことによる災害というものが数多くあります。

私たちは、私たちの目には見えていない希望を待ち望む者とされる道を選びとることができるでしょうか。【信仰によって、わたしたちは、この世界が神の言葉によって創造され、従って見えるものは、目に見えているものからできたのではないことが分かるのです。】（ﾍﾌﾞﾗｲ11:3）

信仰とは、この世界が神様のみ言葉によって創造されたものと信じること。私たちに見えない、神の恵みによって与えられていることを信じることなのです。この信仰によって命を頂いて、希望を持って歩んでいきたいと思います。（笠井元）