1: 天と地が揺り動かされる時がくる
「もう一度、地だけではなく、天をも揺り動かそう」(26)という言葉は、これから【すべての人の審判者である神】(ヘブライ12:23)が天を揺り動かし、揺り動かされないものを存続し、揺り動かされるものを取り除かれることを示しています。また【実に、わたしたちの神は、焼き尽くす火です。】(ヘブライ12:29)と言われます。神は焼き尽くす火をもって、天からのみ旨を告げる方に背を向ける者を焼き尽くし、御国を受け取る者を鍛錬されるのです。
この時の読者にとって、審判者である神が来られることは希望の出来事でした。当時は、迫害、内部分裂等で、教会は立ち行かない状態でした。そのような中、いずれ神が来られる。今どれほど苦しい状態であったとしても、いずれこの世は終わりを迎える。そして自分たちは神様の前に救いの御業を受けた者として立つことが赦されているということです。現実が絶望の中にある時に聞く、終末の出来事は、大きな希望であったでしょう。
今の私たちは、この終末についての言葉をどのように聞くことができるでしょうか。神様の審判の時が来ることを畏れる者であるかもしれません。義であり、正である神様の裁きを受けるのですから、そのことを喜ぶことは難しいようにも思います。私たちが生ぬるい信仰生活を送っているからでしょうか。この時の読者が、特別に緊迫した状況にあったのでしょうか。または、私たちが本当は、緊迫した状況に置かれているにもかかわらず、そのことに気がついていない、気が付こうとしていないとも考えられます。
2: 語っている方を拒むことのないように
ここでは、この終末の時を迎えるにあたって【あなたがたは、語っている方を拒むことのないように気をつけなさい。】(ヘブライ12:25)と教えます。語っている方とは1節前の24節から読み取るならば、新しい契約者の仲介者イエスです。18節からの箇所では、シナイ山に近づく人々が神を恐れて、その言葉を拒んだことが語られています。そしてこのシナイ山に近づくイスラエルの民は、この後、神様から何度も離れ、結果として約束の地に入ることはできなかったのでした。このことを今日の箇所では、【地上で神の御旨を告げる人を拒む者たちが、罰を逃れられなかった】(ヘブライ12:25)とするのです。新しい契約の仲介者イエスを拒むことのなく、天と地が揺り動かされる時に、揺り動かされない者とされるように教えるのです。
3: 神による救い
神様は、この新しい契約の仲介者としてイエス様をこの世に送ってくださったのです。私たちが信じることは、ただこの救いの御業を受け入れることです。14節では【すべての人との平和を、また聖なる生活を追い求めなさい。聖なる生活を抜きにして、だれも主を見ることはできません。】(ヘブライ12:14)とも教えています。私たちは、終末に向けて「聖なる生活」をもって生きるのです。救いは神様から頂くのです。神様が私たちを顧みて、私たちと共に生きてくださっていることを信じることが救いの一歩なのです。
この時の読者は絶望の中にありました。私たちも、この世界を見渡すと、絶望の中に生きていると言ってもいいかと思います。ただその絶望に目を向けないで生きている。目を向けたら、生きる気力がなくなってしまうから。このような世界で存在していることが苦しすぎるからではないでしょうか。私たちも、災害、戦争、または死や病気といった大きな絶望、困難にぶつかる時に、生きる希望を見失ってしまうのではないでしょうか。そのような時に、この神が、私たちを見ていてくださり、私たちに新しい契約の仲介者イエスを通して救いの恵みを語ってくださっていることを覚えたいと思います。
4: 感謝をもって、神に仕えていこう
私たちはすでに、神様からの救いの御業を頂いています。イエス様はすでにこの世に来て下さいました。そして今もまた、共に生きて下さっているのです。【わたしたちは揺り動かされることのない御国を受けている】(ヘブライ12:28)のです。私たちは感謝したいと思います。
感謝を持つとき、私たちの人生は明るくされていくでしょう。ただ、人間はそれほど簡単ではありません。災害や戦争の中で、感謝を持つことはなかなかできないでしょう。その中でも一つ言えることは、どれほどの困難の中にあっても、イエス・キリストが共にいてくださるということです。救いは孤独ではないということ。主が共にいてくださるということなのです。私たちは共にいてくださる神、イエス・キリストに感謝をしたいと思うのです。そしてその感謝の思いを持って、神様に喜ばれる者として仕えていきたいと思うのです。
神に仕えるとして、私たちは何をすることができるのでしょうか。13章では【兄弟としていつも愛し合いなさい。】(ヘブライ13:1)【だから、イエスを通して賛美のいけにえ、すなわち御名をたたえる唇の実を、絶えず神に献げましょう。】(ヘブライ13:15)と教えます。
隣人を愛しなさい。そして神に賛美を献げ、絶えず礼拝を続けることを教えられています。私たちは、恵みを現す者として、感謝して歩んでいきたいと思います。(笠井元)